中小・ベンチャー企業の皆様方へ

「ブランド」と一言でいっても、その定義は実は難しいです。 Wikipediaなどによると、「ブランド」とは、「ある財・サービスを、他の同カテゴリーの財やサービスと区別するためのあらゆる概念」とあります。例えば、信頼感、高級感、最高の技術、・・・といったものでしょうか。

 

ブランド、と聞いてすぐに思い出すのは、ブランド品です。ブランド品として代表的なものは、バッグや衣服の分野かもしれませんが、車や化粧品のような商品からレストランのようなサービスまで、あらゆる分野で「ブランド」は見受けられます。
そして、ブランド品は、同じような製品でも他社の商品より高額で販売することができます。

 

ブランド保護のツールとしての商標登録

 

ブランドが確立すると、その名称やロゴを見たり聞いたりしただけで、そこが提供する商品・サービスに対する共通したイメージを持ってもらうことができます。

 

つまり、会社名や商品名、サービス名(ロゴも)が、ブランドの入り口になります。

 

そのようなブランドを他社の模倣から保護して自社の影響力を維持するためのツールとして商標権があります。

 

なぜ、その「ブランド」は支持されているのか?

 

ブランドに接したときに感じる信頼感や高級感といったものは、何もブランド名からだけではありません。

 

被服や身飾品であれば、そのデザインの素晴らしさやしっかりした縫製、素材のよさ、といった商品が持つ特性がそうさせるのかもしれません。

 

また、車や家電製品であれば、商品のデザインだけでなく、性能といった技術的な要素も入ってくるでしょう。

 

すべてのブランド品が最初からブランド力があったわけではございません。技術やデザインという商品・サービス力があったからこそ、顧客に支持され、やがてブランド力が形成されてきたと言えます。

 

ブランドを構築して守るために商標権以外の手法とは?

 

このような商品・サービス力は、商標権だけでは守りきれません。技術的なことは特許権、デザインに関しては意匠権が保護対象となるからです。

 

では、特許権や意匠権を組み合わせたブランド形成とはどういったものなのでしょうか。

 

例えば、米国アップル社はパソコンやスマートフォン、英国ダイソン社は掃除機等の家電製品でそれぞれブランド力を有しています。
彼らは、性能の良さだけでなくデザイン面でも素晴らしい製品を展開しています。
そのため、米国アップル社に対しては「信者」と呼ばれる熱烈な支持者がいます。

 

これらの製品は、特許権や意匠権で保護されています。
そして彼らはオンリーワンの技術やデザインを構築するとともに、それらが他社に真似されないように特許権や意匠権を取得して展開することによって、ブランドを形成しその価値を高める努力をしています。

 

ブランド価値は、技術やデザインを差別化できてこそ高めることができます。

 

このように商標権だけでなく、特許権や意匠権も使って知的財産権の総合力でブランドを保護・維持します。

 

日本では、例えば、愛知県に愛知株式会社という会社があります。

 

この会社は、教育施設家具、会館・庁舎・体育館などの公共施設家具、ホテル・劇場・ホールなどの民間施設家具を製造販売しています。

 

同社は、「集いと学び空間」をデザインする、というポリシーのもと、空間を意識した製品デザインにまとめあげ、他社と差別化して競争を優位にしようとしています。その成果が、数々のグッドデザイン賞や、国内外の特許権、意匠権という実績に表れています。

 

これらの実績が客先への信頼感を醸成してブランド力を高めています。

 

また、三惠工業株式会社は、椅子を中心とする家具の製造販売を行う会社ですが、この会社も、特許権や意匠権を活用して事業を展開しています。

 

エコプロダクツ市場の創出に向けた椅子作りに取り組むため、環境にやさしい、子供にやさしいデザインをコンセプトにしたブランド「HECMEC」を立ち上げています。そして、このブランドを守るために、海外も含めた特許や意匠、商標の登録を進めています。

 

オンリーワンからナンバーワンへ

 

自社商品・サービスを差別化するためにあらゆる努力をした結果、オンリーワンになれれば特許権等は不要か、というとそんなことはございません。

 

ブランドを維持する努力をしないと、たちまち競合他社に追いつかれてその地位は危うくなります。

 

ブランド力を強化、維持するためには、常に技術やデザインを磨くとともに、使える知的財産権を駆使して権利侵害しようとする他者に対しては断固として戦う姿勢を示す必要があります。

 

 

 

参考:特許庁編「知的財産権活用企業事例集2014 〜知恵と知財でがんばる中小企業〜」